うつ病については近年マスコミでも取り上げられることが多く、一般の方の理解も深まっているのではないでしょうか。ただ、うつ病には「狭義のうつ病(以下うつ病)」と「広義のうつ病(以下うつ状態)」があり、この2つを区別して考える必要があります。
うつ病については近年マスコミでも取り上げられることが多く、一般の方の理解も深まっているのではないでしょうか。ただ、うつ病には「狭義のうつ病(以下うつ病)」と「広義のうつ病(以下うつ状態)」があり、この2つを区別して考える必要があります。
うつ病には、仕事熱心でまじめな性格の人がなりやすいことが知られています。このような人は、頼まれた仕事を断ることができず、限界を超えても弱音を吐くことができません。休み下手で、休職中でも復帰を焦る人ほど、回復に時間がかかる傾向があります。
また、うつ病は、家族の死、仕事での失敗、病気などの喪失体験、あるいは昇進、退職、転居のような環境の変化をきっかけとして発症します。
うつ病では、精神症状と身体症状がともに認められます。精神症状としては、気分が滅入る、意欲がわかない、頭が回らない、仕事が思うように進まない、死にたくなる、などの訴えがあります。身体症状としては、不眠、倦怠感、疲労感、頭痛、食欲低下、体重減少などがあります。
治療では、抗うつ薬を中心とした薬物療法が最も大切です。専門医による診察を受け、抗うつ薬をきちんと服用し、無理をしないでゆっくりと休むことができれば、3か月ほどで症状は比較的速やかに回復します。抗うつ薬の効果は人によってそれぞれ異なります。主治医と相談しながら薬を調整し、自分に合う薬を見つけていきましょう。そうすれば、2種類以上の抗うつ薬を併用する必要はありません。具体的な薬の調整の仕方については「薬について」をご参照ください。
抗うつ薬には様々な種類がありますが、最初に使用するのは原則として新しいタイプの抗うつ薬 (SSRI,SNRIなど) です。基本的に副作用なく服用できるというメリットがあるからです。こうした薬は、服用開始直後から、時に吐き気、眠気などの副作用を認めることもありますが、多くは1週間ほどで消失します。
うつ症状が強い場合、あるいは新しいタイプの抗うつ薬の効果が十分でない場合は、古いタイプの抗うつ薬 (三環系抗うつ薬) を試みます。これらの薬はより効果的で、症状の改善が期待できますが、副作用を多少我慢しながら服用する必要があります。副作用として多いのは、口渇、便秘、眠気などです。
しかし、薬では自分の抱えている対人関係上の問題を解決することはできません。ご希望であれば、うつ状態の場合と同様に、カウンセリングでご自身の課題に取り組むことが問題の解決に役立ちます。
うつ状態には、神経症性うつ病、気分変調症、非定型うつ病などが含まれます。こうしたケースでは、症状は様々な対人関係の問題と深く結びついています。不安や人間関係上の悩みやトラブルなどが原因で、二次的に抑うつ的になっているためです。
うつ病とは異なり、症状は状況よって変化します。例えば、職場での人間関係が原因でうつ状態になっている場合、休職することで症状が速やかに改善する、といったことがよくあります。
このような場合、抗うつ薬での治療には限界があり、薬は補助的に用います。うつ状態の根本的な解決のためには、カウンセリングを通じて自己理解を深め、対人関係のあり方を変えていく必要があります。
いずれにせよ、うつ病になることは、辛く苦しい経験です。しかし、これを、「自分自身と向き合い、新しく変化していくチャンス」と捉えることができれば、これからの人生はより豊かなものになっていくでしょう。